背中に真っ白い翼を持つ、清らかなイメージの天使。
日本人には決して身近な存在とはいいがたいですが、マンガやアニメの中にはよく登場しますし、ゲームやキャラクターグッズのモチーフになったりもしますよね。グッズなどでも可愛いものから美しいものまで数も豊富でとても人気が高いものです。
物語だけでなく、有名な絵画の中にも描かれる彼らには、大天使と呼ばれる存在もいますが、この大天使とは一体どんなものなのでしょうか。
大天使は一番偉くないって本当?
彼らは、神の使いという立場や役割を持つ存在です。小さな子供の姿で描かれたものも少なくありませんが、もちろん大人の姿をしたものも多く、性別はありません。
彼らの中でも大天使と呼ばれる存在は、特に高貴で位が高い印象がありますね。主に4大天使を挙げられることが少なくありませんが、7大とも10大ともいわれることがあります。
位が高いために存在が少ない印象なのに、意外と人数が多いのが大天使でもあります。そして、天使の中でもそれほど偉くはないようです。
大天使の階級は9階位中の8番目
彼らの中にも階級はあって、大天使は9階級中の8番目。下から2番目という低さになります。この事実に驚く方も多いと思いますが、9番目の天使と8番目の大天使以上の存在は、それぞれの役職名になります。
例えるならば、第9位が一般社員、第8位は役職に就いた社員の総称。第1位から第7位まではその各役職名といったところになるでしょう。
そのため、大天使の中に第2位、第3位が存在しているという少々ややこしい構図になるわけです。
堕天し、悪魔になったルシファーもかつては大天使であり階級ではトップの熾天使でした。
階級分けではあくまで9階級中の8番目になりますが、有能な天使ばかりが集まっているのが大天使ですので、1~7位までと8~9位は別物と考えていいでしょう。
大天使が有名なのは物語の題材にされるから
マンガでもアニメでも小説でもゲームでも、天使が登場する場合には大抵が大天使です。それというのも、彼らの中には聞き覚えのあるものたちが多いからです。
後述しますが、ミカエルと聞けば「大天使ミカエル」と思う方は決して少なくないでしょう。決して縁が深いとはいえない私たちでも、ぱっと思い浮かぶくらいですので、それくらい多くモチーフにされたりキャラクター化されたりしているということですね。
清く美しく、また男女のどちらにも描ける存在である彼らは、物語の題材や登場人物にするにはうってつけともいえます。敬虔な信者にとっては理解しがたいことかもしれませんが、彼らが身近ではない日本人でも耳馴染んでいるくらい、物語から発信されていて有名な存在ということになります。
4大天使の種類と役割とは何か
大天使の中でも特に有名な4大天使という存在がいます。彼らはそれぞれ役職を持つエリートですが、それだけではなく様々なものを司っています。
中国や日本の古墳にも描かれている四神のように、それぞれ東西南北や火水風地を司っているものです。
彼らの人数は少なくありませんが、よくモチーフにされる4人の大天使はそういった担当しているものが多い存在といえます。
彼らは、1人1人守るものや方角が異なり、数多い彼らの中でも主要の4大天使になります。
火と知性と司る大天使・ミカエル
大天使といえばミカエルと直結する方も少なくないであろう存在ですね。
ミカエルは第1位の熾天使でもあります。神に最も近く、神に等しいともされるミカエルは、火と知性を司り、東を守る存在です。
ミカエルという名自体が「神に似たもの」「神に等しいもの」という意味を持っていますし、天使界の最高指揮官ともいえる存在。堕天したルシファーと同一の階級になりますね。
熾天使は翼を6枚持つといわれていますが、6枚の翼で描かれていることはあまり多くありません。
女性の容姿で描かれることも珍しく、ほとんどが中性的な美青年の姿をイメージされています。
天使や大天使を束ねる天使長としての役割もあるため、剣と公平さを測る秤もミカエルの象徴です。
水と天啓を司る大天使・ガブリエル
ガブリエルは聖母マリアに受胎告知をした天使として描かれていることでも有名です。
絵画では数々の画家が描いていますが、マリアの前に跪き、イエスを宿したことを告げる姿がほとんどです。
天使に性別はありませんが、ガブリエルは女性の姿で描かれていることが多いことも特徴ですね。
処女懐胎を告げたことも関係していますが、天啓を司り水と北を守護している存在です。
ガブリエルは階級では第5位の力天使。ガブリエルの名の意味は「神の人」とされ、神の言葉を伝える存在。最後の審判ではラッパを吹き、死者をよみがえらせることもガブリエルの役割とされています。
高潔さが特徴でもありますから、白い百合の花もガブリエルの象徴といえるでしょう。
風と癒しを司る大天使・ラファエル
ラファエルは癒しを司る大天使です。風と西を守護し、医師やカウンセラーという役割を持っています。
ラファエルの名の意味は「神の癒し」。医師や看護師、薬師という役目を持っていて、位は第3位の座天使。
痛みや苦痛、不安などを取り除き、トラウマも消し去ってくれる癒しと安らぎの存在です。
ミカエルやガブリエルと比較すると、ラファエルをモチーフにした絵画やラファエルの教会・修道院は少ないといえますが、ラファエルという名に聞き覚えのある方は多いはず。
キャラクターや物語に使われることが多いこともあるためか、知名度ではミカエルに次ぐ高さの存在といっていいでしょう。
ヒーリングの力も持っているといわれていますので、スピリチュアル系がお好きな方には人気の大天使でもあります。
地と知性を司る大天使・ウリエル
ウリエルは他の4大天使よりもやや安定しない存在です。カトリックでは認可されていない天使ですが、旧約聖書外典では重要な役割を果たしている天使。
「神の炎」「神の光」がウリエルの名の意味であり、地と南を守護しています。裁きと予言を司る大天使であり、気象や自然現象もウリエルの管轄とされています。そのため、絵画などで描かれる際は預言書である本を持つ姿か、光・炎の象徴でもある太陽を腕に抱えている姿で描かれています。
また、新約聖書外典では、懺悔の天使と描かれ、神を冒涜するものを焼き、罪人を苦しめる役割として書かれているため、閻魔大王のような役割になるかもしれません。
階級も出展によって安定しておらず、第1位の熾天使とも第2位の智天使とも、第5位の力天使ともいわれています。
その他の大天使の種類と役割は何?
大天使の数は多く、同一視されている天使もいるため、その人数ははっきりしていません。最下位である9階級の一般天使と比較すれば少ないですが、列挙できるレベルの人数ではないといえます。
4大天使の他に7大天使と括る文献なども多く、終末のときには7大天使がラッパを吹くという説もありますね。
天使に詳しくない方でも耳にしたことが多い代表的な4大天使。それではその他にも数多く存在する大天使は、どんな役割を持っているのでしょうか?
大きく美しい鷲のような大天使・セラフィエル
セラフィエルは最後の審判天使の1人。「神の戦車」「神の車」であるメルカバーの王子の1人として数えられている大天使。セラフィエルはその名の通りセラフィムと読む熾天使の長で、その姿はとても大きく美しく、鷲のような体と天使の顔を持っています。
出典によってセラフィエルと呼ぶものと、サラフィエルと呼ぶ場合に分かれますが、エノク書ではセラフィエル。正教会・カトリック教会ではサラフィエルとされるため、少々分かりづらい部分もあるでしょう。
サラフィエルは7大天使の1人と数えられ、「神の祈り」の意の名前を持っています。
セラフィエルを象徴である祈りの姿がイコンにも残されており、糸で吊られた二匹の魚と瓢箪が結びつけられた杖を持っているとされています。
また、正教会の信者は寒さに苦しむときにはセラフィエルに助けを求めます。
愛の慈悲の大天使・イェグディエル
正教会では7大天使と数えられるイェグディエル。神の愛と慈悲を運ぶことを役割とし、努力し働く人々の擁護者とされています。働くものすべてに助言と守護をしてくれる存在ですので、働き者の味方といった天使です。
イェグディエルは金曜日の天使とされ、片手に冠を持ち、もう片方の手に三つの革紐のついた鞭を持つ姿で描かれています。
出典によって持ち物や役割も異なり、カトリック系教会では、燃える心臓を手にしている姿で描かれています。
イフディエルもしくはイェフディエルとも呼ばれ、その名の意味は「神の賛美」。
7大天使にはそれぞれ曜日が振り分けられており、(日)ミカエル・(月)ガブリエル・(火)・ラファエル(水)ウリエル・(木)セラフィエル・(金)イェグディエル・(土)バラキエルと、各曜日の大天使が決まっています。
多くの守護天使が仕える大天使・バラキエル
「神の祝福」の名を持つバラキエルは、バルビエル・バルキエル・バラクィエルとも呼ばれる、正教会7大天使の1人です。
バラキエルは4人の有力な熾天使の中の1人にも数えられ、496000もの守護天使たちか仕える大天使です。
聖歌隊の首領天使との記述もあり、稲妻の天使とも呼ばれています。
バラキエルは、堕天したバラキエルと同一のものとみなされることもありますが、見解は異なっていることが多いです。
白いバラを胸に抱えるか、外套に白バラを散らした姿で描かれているものと、パンかごを抱えている姿の2種類が描かれていますが、出典によって異なります。
主に7大天使と呼ばれているものは、正教会の伝統とされていますし、旧約聖書の1つであるエノク書や、カトリック教会などそれぞれ出展が異なると解釈や伝統が異なるのも大天使の特徴の1つでしょう。
大天使ってどんな存在?
天使はキリスト教独自のものと考えることが多いと思いますが、それは勘違いといえると思います。キリスト教だけでなくイスラム教やユダヤ教にもまた仏教にも天使の役割をする存在があります。
一般的にイメージされる天使はキリスト教のものになりますが、キリスト教も出典が様々ですので考え方は少しずつ変わってしましますね。
共通していえることは、神の使いだということでしょう。その中でも大天使とはどのような位置づけになるのでしょうか。
大天使は神の言葉や意思を伝えるもの
大天使は神の言葉や意思を人間に伝える役割をする存在です。神は直接人にコンタクトを取らないため彼らが代わりに人々を導き、教えを伝えてゆくものと解釈できます。
ガブリエルが聖母マリアに受胎告知したように、神の伝達役と考えていいでしょう。
また天使を語る上では忘れることができない悪魔との戦いや、終末にはラッパを吹き鳴らすことでも知られています。何よりも人々を守護するという役割がありますから、守護天使という役目も担っています。
イスラム教やユダヤ教の彼らは、神の意志を伝えるだけではなく、人々の死後に裁きを下す役目もあります。
仏教の場合は翼をもつ天使ではなく、「童子」や「天部」と呼ばれる仏に使える従者として考えられていますね。
仏教の童子や天部は天使よりもずっと人に近い存在という印象になるでしょう。
天使たちは多神教の神々にも似ている
天使は神の言葉や意思を伝える役割を持っていますし、ほとんどの場合は一神教の宗教にしか存在しません。仏教の場合は童子や天部は天使と同じ働きをしませんから、似て非なるもの考えてもいいと思います。
しかし、日本のような様々なものに神が宿ると考える多神教の国でも、天使に似た存在はあります。むしろ多くの神々そのものが天使と同じ役割としていると考えてもいいかもしれません。
私たちにとって神々は天使と同じくらい身近な存在ですし、唯一神が存在しませんね。ですが天使と同じように神々の位づけはありますし、人々を守り導くという役割も身近な神々と近いのではないでしょうか?
ところや教え、出典が変われば考え方も少しずつ変わりますが、人間の本能として天使のような存在に見守っていてほしいという願望があるのでしょう。
まとめ
長い歴史の中で変化してきた存在だけに、彼らを統一して語ることは難しいといえます。名前の表記や読み方、位置づけも統一されているわけではありませんし、存在自体があいまいなものです。しかし、人は大天使という存在に惹かれますね。
清らかで美しいというだけではなく、人を救い守るという慈悲の存在に憧れを抱くのかもしれません。
日本人の私たちには、物語の中の登場人物として接することが多いですが、キリスト教圏の方にはとても大切な存在でしょう。
アークエンジェルとも呼ばれる大天使たちにはそれぞれ得意分野がありますが、人々を厄災から守り、助けを呼べばどこへでも駆けつけるというヒーローやヒロインのような存在でもあるのです。
困った時には担当分野のアークエンジェルに助けを求めるということが、ごく日常的に行われていますよ。