「サイコセラピー」と「カウンセリング」。このどちらも、耳にしたことがあるという人は多いでしょう。何となく似ている印象のあるこの2つですが、本当にこの2つは似た存在なのでしょうか。
「カウンセリング」についてはわかっていても、どちらかというと、あまり耳にすることのない「サイコセラピー」はよく知らないという人もいるかもしれません。
そこで今回は、サイコセラピーとはどんなものでどういった効果があるのか、カウンセリングとの違いも盛り込みながらご説明していきます。
もくじ
こころの治療「サイコセラピー」ってどんなもの?
サイコセラピーは、日本語では「心理セラピー」と言われることもあります。前述のとおり、カウンセリングよりは知名度が低いため、サイコセラピーが何なのか、効果も含めて知らないという人も多いでしょう。
その違いについては後述しますが、サイコセラピーはカウンセリングとは質の異なるものです。サイコセラピーでしかできないこともあるため、サイコセラピーを受けるのか、カウンセリングを受けるのかという場合、サイコセラピーがどんなものかをしっかりと知っておく必要があるでしょう。
まずはこのサイコセラピーについてどんなものなのかを見ていきましょう。
サイコセラピーとはこころの「治療」
ひとことで言うと、サイコセラピーとはこころの治療のことです。
サイコセラピーを行う人のことを、サイコロジストといいます。サイコロジストとは、ただこころの問題を抱える人の話を聞いてくれるだけではなく、そのこころの問題の背景や原因を理解して、患者さんの心の悩みや病気に対して科学的な研究に基づいた治療を行う職業です。
「サイコセラピー」という語感から、もっとスピリチュアル的だったり、カウンセラー寄りだったりするイメージを持つ人もいるかもしれません。ですが、実はサイコセラピーとは「治療」を行うものなのです。
ですから、こころの問題を抱える人は、サイコセラピーを受けることでその問題を治療することができるかもしれません。
「サイコロジスト」は専門性の高い職業である
前項で少し触れている「サイコロジスト」というサイコセラピーを行う職業についてですが、これは非常に専門性の高い職業です。
こころの「治療」ができるということで、サイコロジストは精神科医のことだと思う人もいるかもしれませんが、サイコロジストと精神科医は全く異なるものでもあります。
たとえば、精神科医はカウンセリングなども用いながら、投薬治療によって心の病気の治療を行いますが、サイコロジストはサイコセラピーで心の治療を行います。
サイコロジストはあまり耳慣れない職業であるにもかかわらず、病院や学校の相談室、企業、刑務所などさまざまな場所で活躍しています。特に海外では日本よりもサイコロジストに通う人が多いようです。
精神的な病気や悩みがサイコセラピーで治療できる
ここまで、サイコセラピーはこころの「治療」であるということについて触れてきていますが、具体的にサイコセラピーではどんな心の問題に対しての治療ができるのでしょうか。
具体的にはうつ病などの気分障害、不安症、対人恐怖症、PTSD、パニック障害などといった精神的な病気から、自分の性格についての悩み、夫婦間を含めた人間関係の悩み、育児に関する悩み、将来に対する不安・悩みなど、かなり広範囲にわたります。
精神的な病気については「治療」という言葉があてはまるのはしっくりきますが、それ以外の心の悩みについてもサイコセラピーで治療できるというのは、なかなか面白い点ですし、カウンセリングと何が違うのか興味がわく人もいるでしょう。
サイコセラピーの主な効果を詳しくご紹介!
では具体的にサイコセラピーにはどのような効果があるのでしょうか。サイコセラピーの治療には、「認知行動療法」や「対人間関係型心理療法」などの治療が含まれています。これらの治療方法は、精神科などで、投薬と一緒に用いられることもある治療です。
こうした治療は投薬治療と同じくらいの効果があるとわかっていて、熟練したサイコロジストなら数回の治療で軽度のうつ病を改善することもできるとか。また、治療が終わった後、効果が長期間持続しやすいのもサイコセラピーによる治療の効果の特徴です。
ただ症状が緩和するだけではなく、その後自分で自分の問題を解決したり、前向きに生きることができるようになったりと、考え方、物事の捉え方自体を変えてくれるのに役立ちます。
精神科で処方されるさまざまな薬のように副作用がないことも嬉しいポイントです。
サイコセラピーとカウンセリングの違いとは?
それでは最後にサイコセラピーとカウンセリングの違いについて考えてみましょう。ここまでサイコセラピーについてご説明しましたが、サイコセラピーがどんなものかわかっても、やはりカウンセリングと何が違うか見えてこないという人もいますよね。
この2つはとても似ているため、混同してしまうのも無理はありません。しかしこの2つは職業として根本的に異なるものです。
ではこの2つにどんな違いがあるのかをみていきましょう。
カウンセリングは悩みを持つ人のサポート
みなさんはカウンセリングというものにどのようなイメージがあるでしょうか。カウンセリングも、こころの問題のある患者の話を聞くというスタイルはサイコセラピーと同じです。
しかしカウンセリングの目的は、悩みを持つ人が答えにたどり着くための「サポート」です。
そのため、カウンセリングによって心の病気の治療をするというよりは、問題を抱える人がその問題について話す場をつくり、それを受け入れてあげるというのがカウンセリングです。
カウンセラーの中には、カウンセリングとはただ聞き、受け入れるだけと信じている人もいて、本当に聞くだけだという人もいるようです。しかし経験豊富なカウンセラーや実力のあるカウンセラーだと、もう少し踏み込んで、患者さんが抱える問題が改善できるようなサポートをする人もいます。
2つの大きな違いは「治療」が含まれるかどうか
「話を聞く」という点に重点がおかれるのがカウンセリング、話を聞き「治療をする」という点に重点がおかれるのがサイコセラピーです。
この2つの大きな違いとは、「治療」という点が含まれるかどうかなんですね。一般的にカウンセリングだけでは、心の問題や病気が解決することはありません。
ただ、熟練したカウンセラーの中には、サイコセラピーのようなことをしてしまっている人もいます。聞くだけではなく、相手に助言をすることで、結果的に患者さんが抱える問題が快方へ向かうということですね。
こうしたことがあるため、サイコセラピーとカウンセリングは、しばしば同等のものように扱われることもあります。実際心理職についている人でも、この違いを知らないことがあるくらいです。
サイコセラピーとカウンセリングどちらを選ぶべき?
心の問題を抱えたとき、サイコセラピーとカウンセリングならどちらを選ぶべきなのでしょうか。
もしも心の病気を治療するのに、投薬治療を行いたくないという場合はサイコセラピーによる治療を試してみる価値はあります。
ただ、日本の精神科医療の現場では、まだまだ「サイコロジスト」だけでの治療ということは少なく、精神科医がサイコセラピーをするというのが一般的ではあるようです。
ですから精神科医にかかったときに、投薬治療ではなく行動療法などの治療法で治療を行いたい旨を伝える必要があるでしょう。
カウンセリングを行うカウンセラーは医師ではないため、問題解決のサポートはできても、基本的に治療を行うことはできません。聞いてもらうこと、受け入れてもらうことが治療の手助けになったりすることはあるでしょう。
ただ吐き出したいだけ、聞いてほしい、受け入れられたい・・・と思うなら、カウンセリングがおすすめです。
まとめ
サイコセラピーというものが、医療の現場で正式に用いられるものだということを知らなかった人もいるかもしれませんね。しかしサイコセラピーは、精神科医療の現場では、非常に重要で必要不可欠な治療方法です。
心の問題を抱えて苦しい人や、心の病気が治らないという人は、サイコセラピーを受けることで快方に向かうこともあるでしょう。また投薬治療が苦手だという人にもおすすめできる治療方法です。
サイコセラピーとカウセリングどちらを選ぶかは、治療をしたいのか聞いてほしいのかというのがポイントになります。そのときそのときの自分の状況に応じて、適した方を選ぶといいでしょう。どちらが優れているというものではなく、この2つは似て非なるものであるということを覚えておきましょう。