チャクラ

チャクラのシンボルと神性な宇宙エネルギーを現すヤントラ

ヤントラとは、神性幾何学模様とも呼ばれ、生命や宇宙の原理となるエネルギーを現す図形です。このヤントラは、インド古来の思想から生まれ、緻密な線で描写された図形には、神聖なエネルギーが宿ると伝えられてきました。そして、現代においてもヤントラのパワーは、「チャクラのシンボル」「瞑想やヨーガのツール」「エナジーカードなどのお守り」など、様々な形で活用されています。今回は、このヤントラについて、その意味や目的、そして活用法について、詳しくご説明します。

神聖な幾何学模様のヤントラについて

ヤントラは、サンスクリット語で「機械」を意味し、私たちの人生をより豊かにするための「機械=道具」として、古くより活用されてきました。実際、古代インド文明の遺跡からは、儀式として使われていたヤントラの図形が発見され、その歴史の深さを物語っています。

現代でもインドでは、寺院や家庭での礼拝、魔除けやお守りなどに、ヤントラの持つパワーが活用されており、特に商売繁盛や無病息災などの、ご利益を願うことが多いようです。

タントリズムから生まれたヤントラ

インドのヒンズー教に根ざす思想形態のひとつに、「タントリズム」というのがあります。タントリズムにおいては、「梵我一如の思想」つまり、神や宇宙との一体化を求めて、瞑想やヨーガの修行を行います。その修行方法には、タントリズムの宇宙観が体系化されており、チャクラやクンダリーニといったコンセプトも、ここから生まれました。

そしてタントリズムでは、神や宇宙との一体化のためには、その宇宙原理ともいえる神聖なエネルギーを、「マントラ」や「ヤントラ」といった道具を介して、実際に体験することが重要である、と説かれます。

ヤントラの模様には、蓮の花をかたどったものや、多くの線が引かれた幾何学模様などがあり、一見マンダラと区別がつきません。そこに厳密な区別はありませんが、マンダラが宗派を問わない全般的な「円形の神聖な絵」であるのに対し、ヤントラはインド思想に基づいた、「神秘のパワーのシンボル」であると言えます。

マントラとヤントラの違い

マントラというのは、サンスクリット語のお経で、厳密には「真言」といい、神々を讃える言葉です。インドの寺院やお祭り、ヨーガのクラスなどでも、耳にすることがあるので、ご存知の方も多いことでしょう。マントラを唱えたときに生じる振動に霊力が宿り、浄化や癒しのパワーへと転化します。

マントラが神聖なエネルギーを現す「音」であるのに対し、ヤントラは神聖なエネルギーを「図形」で現します。描かれた線や形のひとつひとつが、神秘パワーのシンボルとなり、瞑想の道具、お札やお守り、寺院の装飾、建築物など、平面だけでなく立体のデザインとしても、活用されています。

さまざまなタイプのヤントラ

ヤントラには、数多くの種類があり、それぞれが異なる効果をもたらしますが、大きく分けて以下の4種類があります。

  • 神々を現すヤントラ
  • 占星術のヤントラ
  • 建築のヤントラ
  • 願いをかなえるヤントラ

この中で、現代の私たちにとって身近なのは、最後の「願いをかなえるヤントラ」でしょう。たとえば、健康や財産、幸福や成功といった、誰もが持つ願望をかなえるための”道具”として、ヤントラは活用されています。使い方は、プリントされたヤントラを壁や玄関に飾ったり、財布の中に入れておいたりと、日本でのお守りと同じです。

最も有名なのが、「シュリヤントラ」という、生命や宇宙のエネルギーそのものを現すヤントラです。これは、西洋における「フラワーオブライフ」のようなもので、このシュリヤントラの中には、全てのエネルギーが閉じ込められており、陰と陽のエネルギーの結合と調和をもたらすと言われます。そのため、あらゆる不調和の原因が解消され、人生の苦難から逃れられると、伝えられています。

各チャクラを現すヤントラについて

チャクラとは、体内を流れるエネルギーが集まるポイントのことで、これはインド古来の思想、タントリズムから生まれました。神や宇宙との一体化を目指したタントリズムは、その宇宙観を、私たち人間の肉体に投影します。宇宙全体をつかさどるエネルギーをプラナと呼び、このプラナは私たちの身体の中にも、”生命力”や”気”として流れている、と考えたのです。そして、体内を無数に流れるプラナの通り道をナディと呼び、このナディが集中するエネルギーポイントをチャクラと呼びます。

私たちの体内には7つのチャクラ、つまりエネルギースポットがあります。この7つのチャクラは、それぞれが特定の意味、色、場所、そしてヤントラを持ちます。そして、このようなツールを活用した瞑想やエネルギーワークで、チャクラを活性化することで、心と身体の健康を整えていくのが、現代のチャクラのコンセプトです。

それでは、各チャクラの性質や特徴と、それぞれがもつヤントラを見ていきましょう。

生命力と感情のチャクラ(第1・2チャクラ)

第1チャクラ:

ムーラダーラと呼ばれ、会陰部に位置し、生命力を現します。色は赤。

ヤントラは、4つの花弁、地を現す黄色い四角形と、女性器を現す逆三角形が描かれ、三角形の中にはクンダリーニの蛇が眠っています。

このチャクラを活性化することによって、生命力が高まり、安定した生き方や、存在感などが得られます。逆に、このチャクラが弱まると、体力や気力が弱まり、現実逃避や鬱の傾向が出てきます。

第2チャクラ:

スワディシュターナと呼ばれ、丹田に位置し、感情を現します。色はオレンジ。

ヤントラは、6つの花弁、水の元素を現す三日月が描かれます。

このチャクラを活性化することによって、感情や感受性が豊かで、創造性に長け、自立した人生を送ることができます。逆に、このチャクラが弱まると、情緒不安定になり、他人に依存してしまう傾向が出てきます。

自我と愛や思いやりのチャクラ(第3・4チャクラ)

第3チャクラ:

マニプラと呼ばれ、みぞおちに位置し、意思や自我、行動力を現します。色は黄色。

ヤントラは、10つの花弁、火の元素を現す赤い三角形が描かれます。

このチャクラを活性化すると、自己が確立され、自信に満ち、周囲と上手に協調しながら生きていくことができます。逆に、このチャクラが弱まると、自分に自信が持てず、不安にさいなまれたり、プライドが高すぎて利己的な傾向に陥りがちです。

第4チャクラ:

アナハタと呼ばれ、胸の真ん中に位置し、愛や思いやりを現します。色は緑。

ヤントラは、12つの花弁、風の元素を現す星形6角形が描かれます。

このチャクラを活性化すると、愛情や思いやりに満ち溢れ、豊かな人間関係を築くことができます。逆に、このチャクラが弱まると、憎しみや羨望、執着といったネガティブな感情に支配されがちで、人間関係のトラブルにつながる傾向があります。

自己表現と直観のチャクラ(第5・6チャクラ)

第5チャクラ:

ヴィシッタと呼ばれ、咽喉の位置し、自己表現を現します。色は青。

ヤントラは、16つの花弁で蓮を現します。

このチャクラを活性化すると、自己表現やコミュニケーションが高まります。逆に、このチャクラが弱まると、自分の意見を上手く伝えられないなど、コミュニケーション能力に問題がみられるようになります。

第6チャクラ:

アジナと呼ばれ、眉間の真ん中(第3の目)に位置し、直観や智慧を現します。色は藍色。

ヤントラは、2枚の花弁で、無限大を意味する8の字を現します。

このチャクラを活性化すると、直観力と智慧が高まり、的確でスピーディな思考や行動が可能になります。逆に、このチャクラが弱まると、悲観的になったり、問題がなかなか解決しないなど、停滞した状態が続く傾向にあります。

覚醒のチャクラ(第7チャクラ)

第7チャクラ:

サハスラと呼ばれ、頭頂に位置します。色は紫。

ヤントラは、千枚の花弁を持つ蓮の花です。

このチャクラを活性化することで、”悟り”の境地に近づくと言われます。ワンネスと呼ばれる全ての存在との一体感や、高次元とのコミュニケーションなど、スピリチュアルな次元での到達点が、ここにあります。

ヤントラのエネルギーを活用したエナジーカード

チャクラのシンボルのほかにも、ヤントラに秘められたパワーを利用した浄化法や、エネルギーワーク、瞑想、ヨーガなどがあります。それぞれに目的や用法は異なりますが、共通していえるのは、より豊かな人生を歩むために、生命や宇宙の原理となるエネルギーの力をお借りする、ということです。これは目に見えず、形として存在せず、科学的に解明されているものではありませんので、まやかしものだと疑う人もいることでしょう。このようなエネルギーワークには、信じる心が必要だと言われます。そのため、穿った気持ちで試すと効果が出ないこともあると、念頭に入れておくとよいでしょう。ただ、その中でもエナジーカードと呼ばれる、お守りに関しては、気軽に試せますので、100%信じることはできないけど、ちょっと試してみたいという方にお勧めです。

エナジーカードでヤントラパワーをもっと身近に

インドのヤントラだけでなく、世界中の古代から伝わる神聖なエネルギーを現した幾何学模様を、手軽なカードにしたものが、エナジーカードです。お守りのように、常に身近に置いておくことで、そのカードが持つエネルギーと波動で、浄化やヒーリングに効果があると言われます。

インドのシュリヤントラは「繁栄」のシンボルとして、西欧の「フラワーオブライフ」は創造と活性のシンボルとしてポピュラーですが、他にも下記のようなものがあります。

  • チャリスウェル:目覚めと成長を促す「開花」のシンボル
  • メタトロンキューブ:浄化のシンボル
  • シードオブライフ:不安や過去の傷を取り除く「希望」のシンボル
  • セフィロトの樹:進むべき道へと導く「創造」のシンボル
  • ツリーオブライフ:心と身体の健康なバランスを保つ「調和」のシンボル

まとめ

神性な宇宙エネルギーを図形に現したヤントラは、チャクラのシンボルとして、またエナジーカードとして、意外と私たちの身近に存在しています。

ほかにも、ヤントラ瞑想やヤントラヨーガなども耳にしますが、これらはひとつの確立した流派や方法論ではなく、特定の団体が、タントリズムやヤントラの概念を基に、さまざまに展開されているものがほとんどです。これらに興味がある場合は、事前によく下調べするようにしましょう。